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Tokyo Motorist
2019.01.25 Fri
自己紹介の続きになりますが、僕が仕事でオートバイと関わるきっかけとなった雑誌『MOTO NAVI』、その創刊の頃の話などを書きたいと思います。
高校生、大学生の頃はバイクひと筋だった僕は、就職して月給をもらうようになると、すぐにクルマを購入(アウトビアンキA112アバルトというイタリア車)。それからはクルマに夢中になり、それが高じて(いろいろあったけど長くなるから端折りますが)自動車雑誌『NAVI』の編集部で働くようになりました。
とはいえ就職してからもバイクは所有していたのだけど、だんだん乗る機会が減り、30を手前にして、ついに手放してしまいました。
ですがバイクを手放して2、3年経つと、やはり乗りたくなるんですね。
そんな頃に『NAVI」の取材を通じてハーレーやドゥカティなどに試乗する機会があり、「やっぱりバイクって面白いな」という気持ちがふつふつと湧き上がり。
いっぽう仕事の面では、ちょっと煮詰まった感じの時期でもあり、それを察した当時のNAVI編集長(鈴木正文さん・現GQ JAPAN編集長)から「別冊の企画を出してみなさい」と言われ、いくつかの企画を考えたうちのひとつが『MOTO NAVI』だったのです。
自動車雑誌の『NAVI』は、自動車というハードウェアだけを扱うのではなく、それをとりまく文化や経済や暮らし、つまり“ソフトウェア”にスポットを当てた雑誌でした。
そこで僕が考えたのは、その“NAVIの二輪版”。つまりオートバイとそれに関わる文化的なこと、そしてライフスタイルを扱う、“大人が読めるバイク雑誌”というコンセプトの本でした。
四輪(クルマ)に対して、二輪(バイク)はなんとなくヒエラルキーの「下」にあるというか、「大人になったら二輪は卒業して四輪だよ」というところも感じていたので、「自動車雑誌に負けないバイク雑誌をつくってみたい」という勝手な想いもありました。
で、この企画が会社で承認され、NAVIを編集する仕事の傍ら、一人でこの“二輪のNAVI”をつくり始めたのでした。そして忘れもしない2001年3月26日「MOTO NAVI」が発売されたのです。
表紙に大きく謳ったのは「もういちど、オートバイと暮らす。」というコピー。
これはしばらくバイクから離れていた自分自身に向けた言葉でもありました。
表紙のバイクに「ビューエル」を選んだのは意図的なものです。
なるべくニュートラルな雑誌にしたいと思い、日本車でも、ドイツ車でも、イタリア車でもなく、とはいえビューエルはアメリカ車なんですが、なんとなく無国籍な感じがしたので、あえてビューエルがいい、と思いました。
そしてビューエルに跨るのは俳優の鈴木一真くん。彼は当時、ヤマハのドラッグスターのCMや広告に出ていて、バイクに乗るのは知っていました。
僕は誰もが知っている、カッコいいバイク乗りを表紙にしたい!と思っていたので、ダメ元のつもりでオファーしたところ、意外なことにあっさりOKしてくれたのです。
これは雑誌の巻頭言的な文章。
ここに僕なりのメッセージを込めました。
ここに並べているエピソードは、すべて「僕じしん」のことです。
「モーターサイクリスト」を愛読していたのも、限定解除に7回通ったのも、内緒でSRを買ったのも。
つまり最後に書いた「こんな人のために、この本をつくりました」の“こんな人”は自分のことで、「自分が読みたい本をつくった」というメッセージのつもりだったのです。
巻頭の特集コンテンツは「そうだ、ツーリングに行こう。」
なんか、聞いたことのあるコピーですけど。
“そうだ、京都に行こう”っていうのがあったな(笑)。
5つのツーリング、というのをテーマにしました。
ツーリング1は沖縄をビューエルで走る「南へ!」
このページは、文字は一切なし、写真だけで構成したいと思っていました。
写真だけでロードムービーのように「旅」を表現したいなと。
それで鈴木一真くん(の事務所)に「2泊3日で沖縄ロケに行ってくれませんか」とお願いしたんです。予算なんてほんと少ないので、ギャラは格安です。スタッフも最低限です。
それでもマネージャーさんは、OKしてくれました。一真くんが本当にバイクが好きだったのと、僕のMOTO NAVIへの想いに共感してくれたのだと思います。「やった!」という気持ちだった。
2001年の1月21日、僕と一真くんと、カメラマンの峯さんと、ヘアメイクの浜野さん、男4人で沖縄へと飛びました
1月だというのに、沖縄の最高気温は20℃を超える暖かさでした。
この日、東京では雪が降ったと聞いて、驚いたのを覚えています。
この写真は、沖縄南部の糸満のほうで撮ったもの。同じシーンで、一真くんが向こう側に歩いているのと、こっち側に歩いてくるのと、2枚の写真を並べた見開き。
ふつうの雑誌のセオリーではないと思うけど、印象的なページをつくりたいと思って、これだけで何日も悩んで選んだと思う。
一真くんのTシャツ、パンツ、ブーツ、ヘルメットはぜんぶ私物。彼は自分で「LP ANDF」というファッションブランドを持っているほどの洋服好きで、だからこのロケの衣装は自分で選んで持ってきたもの。それもページの“リアリティ”として現れているのだと思う。
この見開きの写真は、とても気に入って、絶対使おう!と決めていた。
で、最初はこの写真を表紙に使おうと思ってたんだよね。この写真を使った表紙デザインもあって、ずっと取っておいたんだけど、いつの間にかなくなってしまった(涙)。
でも、結局あの青い空と赤いビューエルの写真を表紙にして、よかったと思ってるけど。
そうして、この「南へ!」は、写真だけで構成した12ページの記事になった。この記事がMOTO NAVIのすべての始まりだし、僕がこの雑誌でやりたかったことが、端的に表現できていると思う。
それは、まず理屈抜きに「バイクはカッコいい」ということを伝えたかった。
カッコいいバイク、カッコいいバイク乗り、最高のロケーション。
半袖のTシャツに、ぺらぺらのジェットヘル。そんな格好で乗るのも、当時のバイク雑誌としてはタブーだったかもしれない。でもそれは「バイクって自由な乗りものなんだ」ということを伝える、ひとつのメッセージだとも思っていた。
なによりこのロケに行った4人がみんなバイク好きだったし、すごくいいチームワークで撮影できたのも、こういうページができた理由かもしれない。
一真くんはこのロケのちょっと前にNHKの朝ドラ(「天うらら」)に出ていたから、バイクに乗って、宿に着いたとき、ホテルの人が「あれー、テレビで観たひと!」ってビックリしてたな。
とにかく僕の編集者人生の中でも、忘れられない取材旅です。
わー、そんな感じでツーリング特集の後の4つについても書こうと思ったのだけど、すごい長さになりそう……。なのでとりあえずここまで。
もし「続きが読みたい」という奇特な人がいたら(笑)「いいね!」してください。
そんな人がいてくれたら、また徒然に書きたいと思います。
以上、18年前(!)の昔話でした(^^)
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この記事を書いた人
雑誌「MOTO NAVI」「NAVI CARS」の創刊編集長を務め、クルマやバイクのある生活の「楽しみ」を発信し続ける。現在はエディター、ライター、コメンテーターなど幅広く活動。
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